管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問37

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問37 (訂正依頼・報告はこちら)

管理規約違反行為、使用細則違反行為又は義務違反行為に関する次の記述のうち、区分所有法及び標準管理規約(単棟型)によれば、不適切なものはいくつあるか。

ア  管理規約上ペットの飼育が禁止されているマンションにおいて、住戸の賃借人がペットを飼育している場合、理事長は、理事会の決議を経て、賃貸人である区分所有者に対して警告をすることはできるが、当該賃借人に対して警告をすることはできない。
イ  区分所有者が、専有部分の使用細則に違反して、常習的に深夜に大音量でピアノの演奏をしていることから、当該行為の差止めを求めて訴訟を提起する場合には、総会の決議を経る必要がある。
ウ  区分所有者が共用部分の破壊行為を繰り返すなどして他の区分所有者の共同の利益に反する行為を行い、他の区分所有者の共同生活上の障害が著しいことから、訴えをもって当該区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求する旨の集会の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
エ  区分所有者に対し、管理規約違反行為の差止めを求める訴訟を提起する場合は、理事長は当該区分所有者に対して違約金としての弁護士費用を請求することができる。
  • 一つ
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  • 三つ
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この過去問の解説 (2件)

01

不適切なものは「ア、イ」二つです。

 

ア 不適切

賃借人が、規約に違反したときは、理事長は、理事会の決議を経てその賃借人に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができます(標準管理規約67条1項) 

したがって、警告をすることはできないという記述は不適切です。

 

イ 不適切

区分所有者が使用細則に違反したときは、理事長は、理事会の決議を経て、行為の差止めを講ずることができます(標準管理規約67条3項)。

したがって、総会の決議ではなく理事会の決議を経る必要があります。

 

ウ 適切

区分所有者が他の区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合には、区分所有法の規定に基づき必要な措置をとることができます(標準管理規約第66条)。

これらの行為により、区分所有者の共同生活上の障害が著しいときは、集会の決議に基づき、訴えをもって、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができます(区分所有法58条1項)。
この決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければなりません(同条3項)。

 

エ 適切

区分所有者に対し、管理規約違反行為の差止めを求める訴訟を提起する場合は、理事長は、違約金としての弁護士費用を請求することができます(標準管理規約67条4項)。

まとめ

区分所有法と標準管理規約両方の知識が問われている問題です。

このような問題にも対応できるように演習を重ねましょう。

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02

本問は、区分所有者又は占有者の規約等に対する義務違反行為について、管理組合が執ることのできる対応に関する知識を問う問題です。
憶えていないと難しい割と細かい話もあるので難しい部類の問題だと思います。

 

 

アは「不適切」です。

 

賃借人は物件の使用方法について、管理規約等に従う義務があります。
そして理事長は義務違反者に対しては直接警告をすることができます

 

区分所有法第46条第2項「占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。

 

標準管理規約(単棟型)第5条第2項「占有者は、対象物件の使用方法につき、区分所有者がこの規約及び総会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。

 

同コメント第5条関係後段
「賃借人は、占有者に当たる。」

 

標準管理規約(単棟型)第67条第1項「区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。」

 


イは「不適切」です。

 

標準管理規約(単棟型)では、使用細則違反行為の差止め請求訴訟の提起は理事会の決議で行うことができます

 

標準管理規約(単棟型)第67条第3項「区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき(略)は、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。 
一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること 
(第2号略)

 


ウは「不適切」ではありません。

 

区分所有者に対して専有部分の使用を禁止する処分はかなり重い処分ですので、それを請求する前提として集会の決議の前に弁明の機会を与える必要があります

 

区分所有法第58条「前条第1項に規定する場合において、第6条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第1項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる
(第2項略)
3 第1項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない
(第4項略)

 

区分所有法第6条第1項「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」

 

標準管理規約(単棟型)第47条第9項「第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。」

 

標準管理規約(単棟型)第47条第3項第三号「区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起


だいたいにおいて権利制限が著しい場合には言い分くらいは聞かなければならないというのは法律の世界ではお約束だと思っていいでしょう。
行政法の話で例えば運転免許の停止などの処分を行う場合には聴聞の機会を与えて言い分を聞くことが必須です(実質的に単なる形式的な儀礼、アリバイ作りにしかなっていないとしても)。
何か重大な処分につながる話の場合には適正な手続きの一環として相手の言い分を聞くのは当然のことだと思っていいです。
もちろん弁明の機会を与えれば十分で、その機会に相手が応じなかったとしても言い分を聞かなかったことにはなりません。

 


エは「不適切」ではありません。

 

管理規約違反行為の差し止め請求訴訟を提起する場合、それにかかる弁護士費用(及び手続き諸費用)を違約金として義務違反者である区分所有者に対して請求することができます

 

標準管理規約(単棟型)第67条
「(第1項及び第2項略)
3 区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。
一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること
二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること
4 前項の訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる。」

 

「違約金としての」となっている理由は、そもそも弁護士費用は一般論としては損害賠償請求の内容とならないからです。
判例では、不法行為については弁護士費用を損害として認めていますが、債務不履行責任においては原則として弁護士費用は損害として認められません。
しかし、管理規約で、規約違反行為に対する訴訟手続きにおける弁護士費用等を違約金として請求できる旨の規定を定め、それに基づいて「違約金として」弁護士費用等を請求することは可能です(認めた裁判例(東京高判平成26年4月16日)もあります)。

 


以上、「不適切」なものはアイの二つです。

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