管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問38

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問38 (訂正依頼・報告はこちら)

マンションの分譲業者が、区分所有者に対して、建物の専有部分の区分所有権、共用部分の共有持分及び敷地の共有持分を分譲したが、一部の区分所有者に対しては、それらとともに敷地の駐車場の専用使用権を分譲した。
この場合において専用使用権及び専用使用料に関する次の記述のうち、最高裁判所の判決によれば、適切なものの組合せはどれか。

ア  駐車場の専用使用権は、区分所有者全員の共有に属するマンション敷地の使用に関する事項ではなく、専用使用権を有する区分所有者のみに関する事項であるから、区分所有者全員の規約及び集会決議による団体的規制に服すべき事項ではない。
イ  規約の設定、変更等をもって、一部の区分所有者の権利を変更するときには、その承諾を得なければならないから、当該駐車場の専用使用権者の承諾を得ないで当該駐車場の使用料を増額することはできない。
ウ  規約の設定、変更等をもって、一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときには、その承諾を得なければならないが、ここでの「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、一部の区分所有者の受ける不利益がその区分所有者の受忍限度を超えると認められる場合をいう。
エ  規約の設定、変更等をもって、増額された駐車場の使用料が、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は、当該駐車場の使用料の増額を受忍すべきである。
  • ア・イ
  • ア・ウ
  • イ・エ
  • ウ・エ

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この過去問の解説 (2件)

01

適切なものは「ウ・エ」です

 

ア 不適切

駐車場の専用使用権は、区分所有者全員の共有に属するマンション敷地の使用に関する権利であるから、これが分譲された後は、規約及び集会決議による団体的規制に服すべきものです(最判平10.10.30)。

 

イ 不適切

規約の設定、変更等がが一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません(区分所有法31条1項)。

しかし、駐車場の使用料の増額に関する規約の設定、変更等が、社会通念上相当な額と認めることができるときは、特段の事情がない限り、その限度で、専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではなく、この場合は承諾を得ていなくとも駐輪場の使用料を増額することができます(最判平10.10.30)。

 

ウ 適切

規約の設定、変更等が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません(区分所有法31条1項)。

ここでの「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、一部の区分所有者が受ける不利益がその区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解されます(最判平10.10.30)。

 

エ 適切

 

規約の設定、変更等をもって、増額された駐車場の使用料が、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきと解されます(最判平10.10.30)。

 

 

まとめ

最高裁判例からの問題です。本問題を通して判例の要旨を確認しましょう。

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02

本問は最判平成10年10月30日を題材とした問題です。
当該判例の判示事項のうち、専用使用権の分譲を受けた駐車場についての使用料の値上げが、区分所有法第31条第1項後段の「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」と言えるかどうかに関して問うものです。

 

区分所有法第31条第1項「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」

 

本判例では一般論として「区分所有法第31条第1項後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう。」としました。


そして、「区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する規約の設定、変更等は、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者の権利に区分所有法第31条第1項後段にいう「特別の影響」を及ぼすものではない。」としていますが、これについては、審理不尽として高裁に差し戻しています。つまり、本件において「特別の影響」を及ぼすかどうかの判断はしていません。

 

なお、本問では問われていませんが、この争いのさなかに管理組合が行った駐車場使用契約の解除は無効であるという判断もしています。
大雑把に、係争中の事案で、しかも「特別の影響」を及ぼすかどうかが不明な状況であったことを理由としています。

 


アは「適切なもの」ではありません。

 

専用使用権の設定は、「敷地、共用部分又は附属施設」であることが大前提です(専有部分が専用なのは当たり前です)。
管理組合は「建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体」であり、たとえ専用使用権が設定されていたとしても敷地等については、管理組合の管理に服するものであり、したがって、規約又は集会の決議による団体的規制に服すべきものです。

 

本判例では、


「本件の専用使用権は、区分所有者全員の共有に属するマンション敷地の使用に関する権利であるから、これが分譲された後は、管理組合と組合員たる専用使用権者との関係においては、法の規定の下で、規約及び集会決議による団体的規制に服すべきものであり、管理組合である被上告人は、法の定める手続要件に従い、規約又は集会決議をもって、専用使用権者の承諾を得ることなく使用料を増額することができる」


と判示しています。

 

区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」

 


イは「適切なもの」ではありません。

 

先に述べた通り本判例は一般論として、使用料の値上げの必要性と合理性があり、かつ、その値上げが社会通念上相当な額である限り、「特別の影響」があるとは言えないとしているので、承諾がなくても増額することができる可能性があります。

 

「増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではない」

 

また、本判例ではそもそも「特別の影響」があるかどうかについては審理不尽で指し戻しています。本件駐車場の使用料の増額については承諾がなくてもできるとも承諾があってもできないとも言っていません。

 

「本件総会の決議により増額された使用料が社会通念上相当なものか否か等に関して更に審理を尽くさせる必要があるから、同請求に関する部分につき本件を原審に差し戻す」

 


ウは「適切なもの」です。

 

区分所有法第31条第1項に言う「特別の影響」と言えるかどうかについて、最終的に「区分所有者の受任すべき限度を超えるかどうか」で判断します。

 

先に説明した通り本判例では、
 

「「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」
 

としています。

 


エは「適切なもの」です。

 

この判例の要点です。
使用料の増額はその必要性及び合理性があり、かつ、社会通念上相当な額であれば、受忍限度内として、「特別の影響」を及ぼすものではありません。

 

本判例では、


「使用料の増額についていえば、使用料の増額は一般的に専用使用権に不利益を及ぼすものであるが、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべき


としています。

 


以上、「適切なものの組み合わせ」はウエです。

選択肢1. ア・イ

アイはともに「適切」ではありません。よってこの肢は誤りです。

 

選択肢2. ア・ウ

アは「適切」ではありません。よってこの肢は誤りです。

ウは「適切」です。

選択肢3. イ・エ

イは「適切」ではありません。よってこの肢は誤りです。

エは「適切」です。

選択肢4. ウ・エ

ウエはともに「適切」です。よってこの肢が正解です。

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