管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問20
問題文
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
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問題
管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問20 (訂正依頼・報告はこちら)
電気設備に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 建築物への電力の供給は、供給電圧により、「低圧」、「高圧」、「特別高圧」の3種類に分けられる。
- 単相3線式では、電圧線と中性線を使用することで、100ボルトの電気機械器具が利用できる。
- 停電時の予備電源として蓄電池を用いる非常用の照明装置にあっては、充電を行うことなく30分間継続して点灯し、必要な照度を確保できるものでなければならない。
- 建築基準法により、設置が義務付けられる非常用の照明装置の照明器具にLEDランプを用いる場合は、常温下で床面において水平面照度で1ルクス以上を確保することができるものとしなければならない。
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この過去問の解説 (2件)
01
電気設備に関する設問です。細かい数字の正誤が問われていますので、この問題を通して確認しましょう。
適切
建築物への電力の供給は、供給電圧により、「低圧」、「高圧」、「特別高圧」の3種類に分けられます。
適切
単相3線式は、3本のケーブルのうち、電圧線と中性線を使用することで、100ボルトの電気機械器具が使用できます。
適切
予備電源は、蓄電池で、充電を行うことなく30分間継続して非常用の照明装置を点灯させることができるものしなければなりません(建設省告示第1830号)。
不適切
非常用の照明装置は、常温下で床面において水平面照度で1ルクス(LEDランプを用いる場合は、2ルクス)以上を確保することができるものとしなければなりません。
したがって、LEDランプを用いる場合は1ルクスでは足りません。
問題を通して数値の正確な理解に努めましょう。
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02
本問は電気設備と電気設備の一つである非常用照明装置に関する基礎知識を問う問題です。
憶えていないとどうしようもない問題ですが、基本的な知識なのでこれを機に憶えておきましょう。
「最も不適切」ではありません。
肢の記述通り、建築物への送電線からの引込電圧(受電電圧)は、
①低圧(100V又は200V)②高圧(6,000V以上)③特別高圧(20,000V以上)
の3種類があります(これは電気事業法での電圧区分ではなく、電力会社の供給電圧による区分です)。
①低圧は電力会社が設置する変圧器(トランスとも言います。電信柱の上の柱上変圧器というバケツのような物体か地上又は地下にある地上変圧器という四角い箱)で100V又は200Vに変圧してから建物に引き込みます。
②高圧は送電線の電力を建物敷地内の受変電設備へ引き込んでから更に必要な電圧(住宅用なら100Vか200V)に変圧して、配電盤を経由して各住戸をはじめ必要な場所へ電力を送ります。
③特別高圧(特高)も高圧同様ですが電圧の桁が違います(受変電施設も大掛かりになります)。
①低圧は戸建て住宅、小規模マンションでよく使われるので一番身近だと思います。
引込前に電信柱又は路上などの変圧器で家電の定格電圧内まで降圧しているので引込後に変圧の必要がなくそのままの電圧で家電が使用できます。よって変電設備は不要です(変圧器が敷地内の場合もあります)。
②高圧は大規模マンション、商業ビル、中小の工場などで利用されます。
受電電圧が高いので、必要に応じた電圧に変圧するための変電設備が必要になります。そのため、設備の設置維持コストが掛かります。また電気主任技術者が必要など他にも付帯コストは増えます。しかし、電気料金自体は割安になります。
ちなみに、実際の受変電設備は、ほとんどがキュービクル式なのでキュービクル(*)と呼ぶこともあります。
③特別高圧は大規模な工場、電気鉄道などの大電流を扱う所向けです。管理業務主任者試験(だけでなく一般人の日常生活)ではそんなものがある程度の話で十分です。
(*)キュービクル
キュービクルというものがあります。
変圧器(トランス)というものもあります。
現在はどちらも四角い箱に入って地上(又は地下)に設置してあるので割と一緒くたにしている部分もありますが、厳密に言えば、変圧器(トランス)というのは、単に電圧化を変える(通常は降圧)装置です。
対して、キュービクルとは、変圧器も含めて受変電に必要な装置をパッケージとして箱に詰めたものです。
単体の変圧器が箱に入っている場合もありますが、他の機器も含めてひとまとまりで箱に入っているので。
このパッケージ化して箱詰めにした受変電設備を指して「キュービクル式受変電設備」略してキュービクルと呼びます。
ちなみに、キューピクル(略してQP)という表記が時々見られますが、間違いです。
ちなみに契約電力による供給電圧の区分は、
①低圧は50kW「未満」
②高圧は50kW「以上」2,000kW「未満」
③特別高圧は2,000kW「以上」
となります。
「最も不適切」ではありません。
単相3線式の電気設備では、電圧線をつなぐと200V、中性線と電圧線をつなぐと100Vの電圧が得られます。
これによって、高電圧対応の電気器具と従来の100V対応の電気器具の両方を利用することが可能です。
住宅用の配線方式は、単相2線式と単相3線式があります。
単相2線式は、1種類の電圧線(「単相」)と中性線が各1本計2本の線(「2線」)があります。旧来の100V電気器具のみに対応する方式です。
単相3線式は現在の主流で、1種類の電圧線が2本と中性線が1本の計3本(「3線」)あります。2本の電圧線につなぐと200V、1本の電圧線と中性線につなぐと100Vの電圧が得られます。これにより、200Vと100V両方の電気器具が使用できます。
なお、単相3線式で中性線が欠相(断線等)すると、100Vを超える電圧が掛かって定格100Vの器具は故障したり火災が発生するおそれがあります。
そこで、中性線が欠相した場合に器具を保護し、火災の発生を防止するために中性線欠相時に電気を止める中性線欠相保護機能付き漏電遮断器を設置します。ついでに憶えておきましょう。
「最も不適切」ではありません。
非常用照明装置の予備電源の基本性能として、必要な照度で30分間継続点灯することが必要です。
平成29年6月2日国土交通省告示第600号による改正後の昭和45年12月28日建設省告示第1830号「非常用の照明装置の構造方法を定める件」第3 第3号
「予備電源は、(略)充電を行うことなく三十分間継続して非常用の照明装置を点灯させることができるものその他これに類するものによるものと(略)しなければならない。」
余談ですが、マンションに設置される非常用照明灯には3種類のものがあります。一般的には、商用電力(電力会社が送電線を使って送ってくる電力)及び商用電力の代わりとなる自家発電電力が途絶した際に点灯するようにバッテリーを使用します。
①専用型=通常の照明とは独立した器具になっており、平時は消灯していて非常時(停電を検出した場合)のみ点灯します。
②併用型=照明装置自体は通常の照明と兼用であり、平時も点灯し、非常時にも点灯します。
平時は商用電力で点灯し、非常時にはバッテリーで点灯します。マンションはもちろん、ビルなどの廊下で天井を見ると引き紐が付いた照明器具があることに気付くと思います(紐以外の場合もあります)。あの紐を引っ張ると、商用電力を切断してバッテリー点灯に切り替わります。これで点灯試験をします。
バッテリーが劣化すると明るさが足りなかったり、非常用照明等の規定の点灯時間である30分間もたなかったりということが起こります。
管球(蛍光管と電球をまとめてこう言います。今どきはLEDなので管型と球型という意味でしょうか)は平時も非常時も使うので寿命が短くなる傾向がありますが、非常時はそんなにないことを考えれば経済性という面では優れています。
③組込型(埋込型)=平時に点灯する照明装置と非常時に点灯する照明装置の二つの異なる装置が一つの同じ器具に同居しているものです。つまり、平時は平時用の照明装置が作動し、非常時には、専用の非常用照明装置が作動します。完全に独立しているので、滅多に使用しない非常用照明装置の劣化が遅くなるのですが、その代わり二つの装置が存在するので導入コストは高くなります。
これも引き紐が付いていて、引くと装置が切り替わって非常照明の点灯を確認することができます。
ちなみに非常灯の点検は年に1度の建物設備点検で行います。
たいていのマンションでは、月に1度から週に1度くらいは照明点灯試験をやりますが、タイマー式などで動作する平常用の照明器具を強制点灯させるだけなので非常灯は点灯しません。これは非常灯の点検ではありません。
「最も不適切」です。よってこの肢が正解です。
この肢はおそらく細かい知識で引っ掛けを狙ったものでしょう。
非常用照明がLED灯(又は蛍光灯)の場合、床面の照度は最低2ルクス(lx)必要です。
白熱電球を想定している原則では最低1ルクスです。
この違いはLED又は蛍光灯は温度が上がると明るさが低下するおそれがあり、火災などで高温にさらされても1ルクスを下回らないようにするためです。
平成29年6月2日国土交通省告示第600号による改正後の昭和45年12月28日建設省告示第1830号「非常用の照明装置の構造方法を定める件」第4第1号
「非常用の照明装置は、常温下で床面において水平面照度で1ルクス(蛍光灯又はLEDランプを用いる場合にあつては、2ルクス)以上を確保することができるものとしなければならない。」
〔参考〕
建築基準法施行令第126条の5「前条第1項の非常用の照明装置は、次の各号のいずれかに定める構造としなければならない。
一 次に定める構造とすること。
イ 照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。
ロ 照明器具の構造は、火災時において温度が上昇した場合であつても著しく光度が低下しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
ハ 予備電源を設けること。
ニ イからハまでに定めるもののほか、非常の場合の照明を確保するために必要があるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
二 火災時において、停電した場合に自動的に点灯し、かつ、避難するまでの間に、当該建築物の室内の温度が上昇した場合にあつても床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとして、国土交通大臣の認定を受けたものとすること。」
ちなみにマンションの場合、非常用照明装置は共用部に設置すれば良く、専有部分である各住戸には不要です。
余談ですが、照度というのは簡単に言うとある場所の明るさのことです。
ですから、同じ照明器具でも距離が変われば、つまり照らしている場所によって照度は変わります。
非常用照明装置は、器具単体の性能ではなく、実際の設置状況で必要な明るさを確保できているかが問題です。ですから実際の設置状態において「床面」などの特定の場所でどれだけの明るさが必要かという基準が決めてあります。
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