管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問8

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

標準管理委託契約書に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。

ア  標準管理委託契約書は、典型的な住居専用の単棟型マンションに共通する管理事務に関する標準的な契約内容を定めたものであり、実際の契約書作成に当たっては、特別な事情がない限り本契約書を使用しなければならない。
イ  管理組合は、管理事務としてマンション管理業者に委託する事務(別表第1から別表第4までに定める事務)のため、マンション管理業者に委託業務費を支払うが、マンション管理業者が管理事務を実施するのに必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用は、当該マンション管理業者が負担する。
ウ  マンション管理業者は、台風の影響により、管理組合のために、緊急に行う必要がある業務で、管理組合の承認を受ける時間的な余裕がないものについて、管理組合の承認を受けないで実施した場合においては、速やかに、口頭でその業務の内容及びその実施に要した費用の額を管理組合に通知すれば足りる。
エ  マンション管理業者は、管理組合がマンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により当該マンション管理業者以外の業者に行わせる場合、見積書の受理を行うが、当該業務には、その見積書の内容に対する助言等は含まれない。
  • 一つ
  • 二つ
  • 三つ
  • 四つ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

適切なものは「」の一つです。

 

ア 不適切

標準管理委託契約書は、管理組合と管理業者の間で協議が調った事項を記載した契約書を、契約成立時の書面として交付する場合の指針として作成したものです(標準管理委託契約書コメント 1全般関係①)。
したがって、必ずしも本契約書を使用しなければならないわけではありません。

 

イ 不適切

管理組合は、マンション管理業者が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担します。

したがって、マンション管理業者がこれらの諸費用を負担するわけではありません(標準管理委託契約書6条4項)。

 

ウ 不適切

マンション管理業者は、台風の影響により、管理組合のために、緊急に行う必要がある業務で、管理組合の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、管理組合の承認を受けないで実施することができます。この場合において、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を管理組合に通知しなければなりません(標準管理委託契約書9条1項)。 

したがって、口頭で通知するのでは足りません。

 

エ 適切

見積書の受理」には、見積書の提出を依頼する業者への現場説明や、見積書の内容に対する管理組合への助言等は含まれません(標準管理委託契約書別表第1 1(3)関係コメント⑤)。

まとめ

標準管理委託契約書の正しい理解が求められる設問です。問題を通してしっかり確認しましょう。

参考になった数11

02

本問は、標準管理委託契約書の位置づけとその内容として管理業者の行う管理業務について、網羅的な知識を問う問題です。
相互に関係がない上、個数問題なのですべての肢の正誤の判断が必要という、面倒な部類の問題です。

ある程度は常識的に判断できますが、やはり標準管理委託契約書には逐一目を通しておくべきです。
契約というのは法律学の延長にある話ですから、法律学の基本である「条文を読む」というのは契約書の内容に関しても同じことが言えます。
条文を読まずに法律は語れません。同様に条文を読まずに契約は語れません。

 

国土交通省のウェブサイトに標準管理委託契約書及び同コメント(標準管理委託契約書の解説です)が掲載されています。一読と言わず精読することをお勧めします。
不動産業:「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」の改訂(令和5年9月11日) - 国土交通省
特に逐条解説的な「コメント」にはぜひとも目を通しておくべきです。

 

 

アは適切ではありません。

 

標準管理委託契約書はあくまでも指針、見本、ひな形、叩き台です。
その通りにしろという強制力はまったくありません。

 

標準管理委託契約書コメント1全般関係
「①この管理委託契約書(以下「本契約書」という。)は、マンションの管理組合(以下「管理組合」という。)とマンション管理業者(以下「管理業者」という。)の間で協議が調った事項を記載した契約書を、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号。以下「適正化法」という。)第73条に規定する「契約成立時の書面」として交付する場合の指針として作成したものである。
②本契約書は、典型的な住居専用の単棟型マンションに共通する管理事務に関する標準的な契約内容を定めたものであり、実際の契約書作成に当たっては、個々の状況や必要性に応じて適宜内容の追加・修正・削除を行いつつ活用されるべきものである。」

 


イは適切ではありません。

 

前段は正しいです。と言うか慈善事業じゃないのですから当たり前ですね。
後段は誤りです。通常、管理に必要な経費は管理組合負担です。

 

標準管理委託契約書第6条「甲(管理組合。筆者註)は、管理事務として乙(管理業者。筆者註)に委託する事務(別表第1から別表第4までに定める事務)のため、乙に委託業務費を支払うものとする。(第2項第3項略)
4 甲は、第1項の委託業務費のほか、乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。」

 

必要経費をだれが負担するのか?という話ですが、実費は委託者側が負担するのが社会的な慣行であり法律においても当然の前提と言っていいでしょう。

民法の委任契約においても費用は報酬と区別され、独立して償還請求が認められています。

 

民法第650条第1項「受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。」

 

なお、管理委託契約は準委任であり、委任の規定が準用されます。

 

民法第656条「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」

 


ウは適切ではありません。

 

台風などの自然災害の緊急対応で管理組合の承認を受ける時間がない場合には未承認で業務を実施できるという部分は良いのですが、「口頭で」の部分が誤りです。書面でなければなりません
揉めた時に水掛け論になるので書面で証拠を残すのが、マンション管理に限らず、世の中の常識だと憶えてください。逆に言えば書面を作成しないような相手は信用できません。

 

標準管理委託契約書第9条第1項「乙は、第3条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる災害又は事故等の事由により、甲のために、緊急に行う必要がある業務で、甲の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、甲の承認を受けないで実施することができる。この場合において、乙は、速やかに、書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を甲に通知しなければならない。
一 地震、台風、突風、集中豪雨、落雷、雪、噴火、ひょう、あられ等
二 火災、漏水、破裂、爆発、物の飛来若しくは落下又は衝突、犯罪、孤立死(孤独死)等」

 

第1号が自然災害、第2号が人が絡む事件・事故です。

 


エは適切です。

 

管理組合が管理会社を通さずに修繕、点検等を業者に依頼した場合、見積書の受理はしますが、内容に対しては口出しはしません。

 

標準管理委託契約書コメント39 別表第1 1(3)関係
「⑤別表第1 1(3)二の「見積書の受理」には、見積書の提出を依頼する業者への現場説明や見積書の内容に対する管理組合への助言等(見積書の内容や依頼内容との整合性の確認の範囲を超えるもの)は含まれない
ただし、管理組合と管理業者の協議により、これらを追記することは可能である。なお、これらを追記する場合には、費用負担を明確にすること。」

 

助言等については、それぞれのマンションで必要に応じて定めなさいということになっています。要するに、ひな形としては最低限のことだけ定めるので、内容の上乗せは個々の当事者が考えてくれということです。


余談ですが、金銭が絡むと揉めるから明確にしておきなさいと書いてありますね。金の話は明確にしておく。これが社会常識と心得てください。

 

 

以上、適切なものはエ一つです。

参考になった数1