管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問7

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問7 (訂正依頼・報告はこちら)

標準管理委託契約書に関する次の記述のうち、適切な記述のみを全て含むものは次のうちどれか。

ア  マンションの専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を、管理組合が行うとされている場合において、管理組合からマンション管理業者に対して依頼があるときには、当該部分の管理を管理委託契約に含めることも可能である。
イ  マンション管理業者は、管理組合の組合員が管理費等を滞納したときは、その支払の督促を行うが、督促しても当該組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、マンション管理業者は当該滞納にかかる督促業務を終了する。
ウ  宅地建物取引業者が、管理組合の組合員から当該組合員が所有する専有部分の売却の依頼を受け、その媒介の業務のために、理由を付した書面により管理規約の提供を求めてきたときは、マンション管理業者は、当該管理組合に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供することになるが、その場合、その提供に要する費用を当該宅地建物取引業者から受領することができる。
  • ア・イ
  • ア・ウ
  • イ・ウ
  • ア・イ・ウ

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この過去問の解説 (2件)

01

適切なものはア・イ・ウです。

 

ア 適切

マンションの専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を、管理組合が管理を行うとされている場合において、管理組合から管理業者に対して依頼があるときに、当該部分の管理を管理委託契約に含めることも可能です(標準管理委託契約書コメント 3第3条関係③)。

 

イ 適切

管理業者は、管理組合の組合員が管理費等を滞納したときは、その支払の督促を行います。 

そして督促してもその組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、管理業者は、その業務を終了します(標準管理委託契約書別表第1 1(2)②二、三)。 

 

ウ 適切

管理業者は、管理組合の組合員から当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受けた宅地建物取引業者が、その媒介等の業務のために、理由を付した書面の提出により管理規約の提供を求めてきたときは、当該管理組合に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約等の写しを提供します。

この場合、その提供に要する費用を、管理規約等の提供を行う相手方である宅地建物取引業者から受領することができます(標準管理委託契約書15条2項)。

まとめ

標準管理委託契約書の正しい理解が求められる設問です。問題を通してしっかり確認しましょう。

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02

本問は、標準管理委託契約書及び同コメントに関する知識問題です。常識と一般的な知識でも解けますが、個々の選択肢に統一性がないので関連で解くことはできません。深く考えすぎるとかえって間違うかもしれません。

 

国土交通省のウェブサイトに標準管理委託契約書及び同コメント(標準管理委託契約書の解説です)が掲載されています。一読と言わず精読することをお勧めします。
不動産業:「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」の改訂(令和5年9月11日) - 国土交通省
特に逐条解説的な「コメント」にはぜひとも目を通しておくべきです。

 


アは適切です。

 

大雑把に言えば標準管理委託契約書に定める管理対象部分は、原則として専有部分以外です。

 

標準管理委託契約書第2条第5号
「管理対象部分 
イ敷地
ロ専有部分に属さない建物の部分(規約共用部分を除く。)
(略)
ハ専有部分に属さない建物の附属物
(略)
ニ規約共用部分
(略)
ホ附属施設
(略)

 

標準管理委託契約書コメント2 第2条関係
「①本条でいう管理対象部分とは、管理規約により管理組合が管理すべき部分のうち、管理業者が受託して管理する部分をいい、組合員が管理すべき部分を含まない。(以下略)」

 

しかし、専有部分であっても、共用部分と構造上一体となった部分については、共用部分と一体で管理を行う必要があれば管理組合が管理することができる旨の規定が標準管理規約にあります。それを基にして標準管理委託契約書においても当該管理規約に規定する専有部分については、管理対象とすることができます。

 

標準管理委託契約書コメント3 第3条関係
「③管理業者が組合員から専有部分内の設備の修繕等で対応を求められるケースがある。管理業者の管理対象部分は、原則として敷地及び共用部分等であるが、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分(配管、配線等)は共用部分と一体で管理を行う必要があるため、管理組合が管理を行うとされている場合において、管理組合から依頼があるときに本契約に含めることも可能である。」

 

「されている場合」とは管理規約に定めがある場合という意味です。

 

これは定番中の定番知識で毎年のように、しかも複数出題されます。ですから絶対に憶えておかなければなりません。本問出題年の令和5年度の試験だけでも本問以外に、問10及び問27で出題されています。


なお、管理業の基本中の基本として憶えておくべきことですが、管理業者は管理組合の権限を代行するものです。
そして管理組合は本来的には区分所有建物の共用部分の管理のために存在します。

区分所有法上は、管理組合の管理対象は「建物並びにその敷地及び附属施設」となっており、建物について特に共用部分に限定されてはいません。しかし専有部分は区分所有者の所有物です。ですから専有部分については区分所有者が自己の責任において管理するのが本来の話です。
一方、敷地、建物の共用部分など専有部分以外の共"有"にかかる部分は誰が管理するのか?という問題に対応するために、制度として管理する主体を用意する必要があります。それが管理組合(区分所有法上の表現では「管理を行うための団体」)です。
ですから、管理組合が行う専有部分についての管理はあくまでも二次的なものであり、本来的な管理組合の権限は、敷地、建物の共用部分などの専有部分以外の管理にあります。
その管理組合の権限を代行する管理業者もまた基本的には敷地、建物の共用部分の管理を行うのが本来の業務であり、専有部分の管理はやらないしやれないのが原則です。

 


以下は現場実務の話です。試験とは関係ありません。

専用使用部分については、あくまでも共用部分なので管理組合の管理に属し、また管理業者も管理業務を行うのが一般的です。しかし、専用使用部分の日常的な管理(清掃など)は専用使用権者が行うものであり、管理対象部分ではあるが清掃対象範囲からは外してあるということはよくあります。

具体例で言えば、住戸玄関ポーチ(アルコーブと呼ぶこともあります。柵と門扉で仕切られているのがポーチ、仕切りがなく単に引っ込んでいるだけのくぼみ部分がアルコーブ、という区別は一応あります)内は専用使用部分であり、管理対象には入っていても清掃対象からは外してあります(なお、標準管理委託契約書の清掃対象部分に書いてある「ポーチ」とは住戸玄関ポーチのことではなく、建物全体の玄関ポーチのことです)。

もっとも、実務的にはなし崩しになっていることもままあります(清掃範囲に入っていなくても、清掃しないと苦情が出たりする場合もあります。筋違いな苦情なのですが、苦情対応が面倒なので適宜清掃するという現場対応をしていることもよくあります。本当は良くないのですが)。

また、個々の具体的な管理委託契約書にはっきり書いていない場合も少なくありません。そもそも管理規約に専用使用部分の管理についての明確な規定がなかったり、規定はあっても専用使用部分として記載がない専用使用部分があったりすることもあります。
実務の管理規約、管理委託契約書は標準管理規約、標準管理委託契約書を土台にして作っていると言っても建物によって共用部の構成が異なるために、結構アラがあります。

 


イは適切です。

 

管理業者は、管理費等の滞納者に対して督促までは行いますが、それ以上は行いません。
それ以上やると弁護士法第72条違反の行為(いわゆる非弁行為。略して非弁とも言います)になるおそれがあるからです。

 

標準管理委託契約書第11条「乙(管理業者。筆者註)は、第3条第1号の事務管理業務のうち、出納業務を行う場合において、甲(管理組合。筆者註)の組合員に対し別表第1 1(2)②による管理費、修繕積立金、使用料その他の金銭(以下「管理費等」という。)の督促を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は甲が行うものとする。」

 

標準管理委託契約書コメント11 第11条関係
「①弁護士法第72条の規定を踏まえ、債権回収はあくまで管理組合が行うものであることに留意し、第2項の管理業者の管理費等滞納者に対する督促に関する協力について、事前に協議が調っている場合は、協力内容(管理組合の名義による配達証明付内容証明郵便による督促等)、費用の負担等に関し、具体的に規定するものとする。
滞納者が支払わない旨を明らかにしている状態又は複数回の督促に対して滞納者が明確な返答をしない状態にもかかわらず、管理業者が督促業務を継続するなど法的紛争となるおそれがある場合には、弁護士法第72条の規定に抵触する可能性があることに十分留意すること。」

 

標準管理委託契約書別表第1事務管理業務 1基幹事務 (2)出納 ②管理費等滞納者に対する督促
「一 毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、甲に報告する。
二 甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話若しくは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
三 二の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその業務を終了する。」

 

標準管理委託契約書コメント34 別表第1 1(2)関係 
「⑧管理費等の滞納者に対する督促については、管理業者は組合員異動届等により、管理組合から提供を受けた情報の範囲内で督促するものとする。
なお、督促の方法(電話若しくは自宅訪問又は督促状)については、滞納者の居住地、督促に係る費用等を踏まえ、合理的な方法で行うものとし、その結果については滞納状況とあわせて書面で報告するものとする。ただし、あらかじめ定めた期間(別表第1 1(2)②二に定める「○月」)内であっても、滞納者が支払わない旨を明らかにしている状態又は複数回の督促に対して滞納者が明確な返答をしない状態にもかかわらず、管理業者が督促業務を継続するなど法的紛争となるおそれがある場合には、弁護士法第72条の規定に抵触する可能性があることに十分留意すること。」

 


ウは適切です。

 

宅地建物取引業者が居室の売却依頼を受けて管理規約等の提供を求めてきた場合、管理規約等の写しを提供しますが、その費用については、管理業者が受領することができます
この写しの提供は管理組合の業務でありそれを管理業者が代行するようになっています。
そのための費用の受領についても、明示の規定を設けて代行できることを明確にしています。
 

委任事務の一環として何かを受領するのは一般的な委任の範囲内の事務と言えますが、準委任である管理業務においても同じことが言えます。

その意味では、情報提供の事務を代行しているのだからそのために必要な費用の受領も代行できるのは当然と言えば当然です。

しかしながら、金が絡む話はもめる原因になるので、明確にしておくのが良いということです。

 

標準管理委託契約書第15条「乙(管理業者。筆者註)は、甲(管理組合。筆者註)の組合員から当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受けた宅地建物取引業者が、その媒介等の業務のために、理由を付した書面の提出又は当該書面を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次の各号に定めるもの(以下「電磁的方法」という。)により提出することにより、甲の管理規約、甲が作成し保管する会計帳簿、什器備品台帳及びその他の帳票類並びに甲が保管する長期修繕計画書及び設計図書(本条及び別表第5において「管理規約等」という。)の提供又は別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約等の写しを提供し、別表第5に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする。甲の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のためにこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする。 
一 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
二 磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
2 乙は、前項の業務に要する費用を管理規約等の提供又は別表第5に掲げる事項の開示を行う相手方から受領することができるものとする。
(第3項略)」

 

 

以上、適切なものはアイウすべてです。

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