管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問6

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

管理委託契約の解除等に関する次の記述のうち、標準管理委託契約書によれば、最も不適切なものはどれか。
  • 管理組合及びマンション管理業者は、その相手方に対し、少なくとも3月前に書面又は口頭で解約の申入れを行うことにより、管理委託契約を終了させることができる。
  • 管理委託契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、管理組合及びマンション管理業者は、当該契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。
  • マンション管理業者が管理組合に対し、自らの役員が反社会的勢力ではないことを確約したが、当該確約に反する申告をしたことが判明した場合、管理組合は何らの催告を要せずして、管理委託契約を解除することができる。
  • 管理組合及びマンション管理業者は、その相手方が、管理委託契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、当該契約を解除することができる。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

標準管理委託契約の終了及び更新に関する設問です。

選択肢1. 管理組合及びマンション管理業者は、その相手方に対し、少なくとも3月前に書面又は口頭で解約の申入れを行うことにより、管理委託契約を終了させることができる。

不適切

 

解約をするときは、その相手方に対して、少なくとも3か月前に文書により解約の申入れを行うことにより、管理委託契約を終了させることができます(標準管理委託契約書21条)。

したがって、口頭による解約の申入れは認められていません。

選択肢2. 管理委託契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、管理組合及びマンション管理業者は、当該契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。

適切

 

管理委託契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議が調う見込みがないときは、管理組合及びマンション管理業者は、本契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができます(標準管理委託契約書23条2項)。 

選択肢3. マンション管理業者が管理組合に対し、自らの役員が反社会的勢力ではないことを確約したが、当該確約に反する申告をしたことが判明した場合、管理組合は何らの催告を要せずして、管理委託契約を解除することができる。

適切

 

マンション管理業者は、管理組合に対し、自らの役員が反社会的勢力ではないことを確約する必要があります(標準管理委託契約書27条2項)。 

この確約に反する事実が判明したとき、管理組合は、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができます(標準管理委託契約書20条2項5号)。

選択肢4. 管理組合及びマンション管理業者は、その相手方が、管理委託契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、当該契約を解除することができる。

適切

 

管理組合及びマンション管理業者は、その相手方が、管理委託契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、当該契約を解除することができます(標準管理委託契約書20条1項)。

まとめ

どのような場合に管理委託契約を終了・更新することになるかをこの設問を通して確認しましょう。

参考になった数11

02

本問は、管理委託契約の更新、解除等に関する標準管理委託契約書の規定の知識を問う問題です。
知識としてはそれほど難しいものではありませんし、元より契約当事者の利害を考慮して作ったひな形である標準管理委託契約書ですからその趣旨から常識的に考えても正解は可能な問題だと思います。

 

国土交通省のウェブサイトに標準管理委託契約書及び同コメント(標準管理委託契約書の解説です)が掲載されています。一読と言わず精読することをお勧めします。
不動産業:「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」の改訂(令和5年9月11日) - 国土交通省
特に逐条解説的な「コメント」にはぜひとも目を通しておくべきです。

選択肢1. 管理組合及びマンション管理業者は、その相手方に対し、少なくとも3月前に書面又は口頭で解約の申入れを行うことにより、管理委託契約を終了させることができる。

「最も不適切」です。よってこの肢が正解です。

 

管理委託契約の解除の申入れは「書面」で行う必要があります。口頭ではできません。口頭だと言った言わないの水掛け論になるおそれがあるので、後の紛争防止のために書面によることを規定しています。

 

標準管理委託契約書第21条「前条の規定にかかわらず、甲又は乙は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。」

 

契約絡みは、後々の紛争防止のために可能な限り書面化が望ましいというのは、社会常識と思ってください。

選択肢2. 管理委託契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、管理組合及びマンション管理業者は、当該契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。

「最も不適切」ではありません。

 

まさにその通りです。
 

更新のための協議がまとまらない場合、契約がなくて管理ができないという空白期間を作らないように、期間を定めて前の契約と同じ内容でとりあえず契約できるようになっています。

 

標準管理委託契約書第23条第2項「本契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議が調う見込みがないときは、甲及び乙は、本契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。」

 

これも、協議がまとまらないために管理業務が滞るという特に管理組合側の不利益を避けることを考えれば、ある意味当然の話と理解できるでしょう。
期間を定めての部分は、なし崩し防止のためと思ってください。特に更新内容が不利な当事者が引き延ばしを図るようなことがあっては反対当事者の利益を害しますから、期間は制限する必要があります。

 

なお、この暫定契約の場合においても、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(管理適正化法)第72条の適用があります。したがって、重要事項の説明等の手続きが必要です。

 

管理適正化法第72条「(第1項略)
2 マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない。
3 前項の場合において当該管理組合に管理者等が置かれているときは、マンション管理業者は、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、重要事項について、これを記載した書面を交付して説明をさせなければならない。(ただし書略)
(第4項以下略)」

選択肢3. マンション管理業者が管理組合に対し、自らの役員が反社会的勢力ではないことを確約したが、当該確約に反する申告をしたことが判明した場合、管理組合は何らの催告を要せずして、管理委託契約を解除することができる。

「最も不適切」ではありません。

 

管理会社の役員に反社が関与していないことを確約していたがそれが虚偽であった場合、催告不要で直ちに管理委託契約を解除できます。

 

標準管理委託契約書第20条第2項「甲又は乙の一方について、次の各号のいずれかに該当したときは、その相手方は、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。 
一 乙が、銀行の取引を停止されたとき
二 乙に、破産手続、会社更生手続、民事再生手続その他法的倒産手続開
始の申立て、若しくは私的整理の開始があったとき
三 乙が、合併又は前号以外の事由により解散したとき
四 乙が、マンション管理業の登録の取消しの処分を受けたとき
五 第27条各号の確約に反する事実が判明したとき

 

標準管理委託契約書第27条「甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下これらを総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
二 自らの役員(甲の役員及び乙の業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約を締結するものではないこと。
(第4号略)」

 

第20条第2項第1号ないし第4号は、業務遂行に問題が生じているか又は問題が生じる可能性が高い場合であるなので無催告解除をして他の相手を探す必要があるというのは、だいたい納得できると思います。

 

そして、本問の第5号、すなわち第27条各号に該当する場合には、反社の関与を防止し、管理委託契約の相手方を保護するという目的を果たすために、無催告で解除が可能です(省略した第4号は直接的には反社に限りませんが、その行為が反社会的であることからして実質的には反社排除と同質の規定です)。

 

ちなみに、反社が関与しないこと等を確約するのは、契約の両当事者です。本問は管理会社側という設定ですが、管理組合側についても同様です。ついでに憶えておきましょう。

 

確約違反は、契約の錯誤又は詐欺取消しと同じようなものだと思えば理解はできると思います。詐欺又は錯誤を理由とする取消しには催告は不要です。
また、反社絡みの話は、催告によって事態が改善する見込みは不確定でしかも事実上あまり期待できないので催告をしても無意味だと考えることもできます。

選択肢4. 管理組合及びマンション管理業者は、その相手方が、管理委託契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、当該契約を解除することができる。

「最も不適切」ではありません。

 

管理委託契約は期間の定めのある継続的な契約ですから、債務不履行があった場合には相当の期間を定めてその履行を催告し、当該相当の期間内に履行がされない場合には解除ができます

 

標準管理委託契約書第20条第1項「甲又は乙は、その相手方が、本契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。この場合、甲又は乙は、その相手方に対し、損害賠償を請求することができる。」

 

理委託契約の解除の規定としてはこちらが原則であり、標準管理委託契約書第20条第2項に定める無催告解除は例外です。

一般論としての債務不履行について直ちに契約の解除を認めるのは、適切とは言えません。せめて相当の期間を定めた催告という手順を踏むのが適切だということは判るようにしてください。
これは、民法の原則通りでもあります。

 

民法第541条本文「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」

参考になった数1