管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問4
問題文
管理組合法人Aと施工会社Bとのマンションの外壁補修工事請負契約における工事代金に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
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問題
管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
管理組合法人Aと施工会社Bとのマンションの外壁補修工事請負契約における工事代金に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
- Bが、Aに対し契約で定めた工事代金より高い金額を請求したところ、Aがそれに気づかずに請求された金額を支払った場合には、Aは、Bに対し、過払い分の返還を請求することはできない。
- BのAに対する請負代金債権について、AB間においてその譲渡を禁止する旨の特約があった場合に、BがAの承諾を得ないで行った当該債権の第三者に対する譲渡は無効である。
- AのBに対する請負代金債務について、Aの理事が当該債務を保証する旨の契約をBとの間で締結する場合に、その契約は、口頭の合意によっても成立する。
- AのBに対する請負代金の支払期日の前日に、地震で管理事務室が損壊したため、Aが支払期日にその代金を支払うことができなかった場合でも、Aは、Bに対する債務不履行責任を免れない。
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この過去問の解説 (2件)
01
債権総則および不当利得に関する問題です。
不適切
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負います(民法703条)。
AがBに支払った過払い分は、法律上の原因がないため、Aは、Bに対して過払い分の返還を請求することができます。
不適切
債権は、譲り渡すことができます。当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられません(民法466条1項、2項)。
したがって、AB間において債権の譲渡を禁止する特約があったとしても、BがAの承諾を得ないで行った当該債権の第三者に対する譲渡は有効となります。
不適切
保証契約は、書面又は電磁的記録でしなければ、その効力を生じません(民法446条2項、3項)。
したがって、口頭の合意では保証契約は成立しません。
適切
金銭の給付を目的とする債務の不履行についての損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができません(民法419条3項)。
したがって、Aは不可抗力で支払期日に請負代金を支払うことができなかった場合でも、Bに対する債務不履行責任を免れることはできません。
一つの設問で複数の論点が問われています。
各選択肢につき、どの論点が問われているかを確認した上で解くことを心がけましょう。
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02
本問は請負契約という設定ですが、実質はただの債権総論の問題です。
つまり、請負契約であるというのはただの設定であり、問題自体は債務の履行に関する一般的な規定を問うものです。
マンション管理関係で出てくる契約で割と重要なのが請負契約なので、マンション管理関係の試験では請負契約という設定にすることがよくあるだけです。
と言っても、管理業務主任者試験では請負契約は定番の出題です。
ですから請負契約は必修です。この問題ではたまたま請負であることに意味がありませんが、だからと言って請負契約について知らないでは困ります。
請負契約の知識を前提とした問題はよく出ます。複数題出ることもあります。
「最も適切」ではありません。
契約金額よりも過大な代金を支払った場合、超過分は不当利得となり、受領に者は返還義務が生じるのが原則です。
超過分の受領については、その根拠となる契約などがないのですから「法律上の原因」がありません。
細かい話をすると、「法律上の原因」とは何かを論じることができます。
しかし、深入りしてもしょうがないので「法律上の原因」が何かは気にせず、大雑把に「法律上の原因がない」とは「利得者において当該利得を保持させることを法律上正当化することができない」という意味だと思っておけば十分です。
「最も適切」ではありません。
譲渡禁止特約付き債権であっても譲渡は可能です。
ちなみに、請負代金債権は単純な金銭債権であり、誰が履行しても結果は同じなので第466条第1項ただし書の性質上の譲渡不能債権ではありません。
「最も適切」ではありません。
保証契約は必ず書面(又は電磁的記録)によらなければなりません。
第2項にある通り口頭による保証契約は無効です。
このように一定の方式を必要とする行為を要式行為と言います。
契約は意思表示の合致だけで成立するというのが明治以来の民法の伝統ですが、保証契約で責任だけを負わされる保証人の負担が目に余るようになったために、安易な保証契約を防ぐという趣旨で書面によることを義務付けました。
「最も適切」です。よってこの肢が正解です。
金銭債務の履行は、不可抗力を抗弁とする(≒不履行の正当化の理由とする)ことができません。
なおついでに、金銭債務の特則として、損害の証明を要しないということも憶えておきましょう(通常の損害賠償の場合、請求者が損害の証明をする必要があります)。
法定利率又は約定利率のいずれか高い方によって定まる金額がそのまま損害賠償額となります。
「そのまま損害賠償額となる」ので、この損害額は同時に上限にもなります。つまり、仮に損害額がこの金額を上回ることを証明しても、これ以上の賠償は受けられません。
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