管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問3

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

Aが、代理権を有しないにもかかわらず、Bの代理人と称して、Cとの間でB所有のマンションの一住戸の売買契約(以下、本問において「本件売買契約」という。)を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、最も不適切なものはどれか。
ただし、Aは制限行為能力者ではないものとする。
  • Aの行為は無権代理行為であるが、Bが追認をすれば、本件売買契約は有効となる。
  • 本件売買契約が締結されたときに、CがAに代理権がないことを知っていた場合は、Cは、Bに対して、追認をするかどうかを確答すべき旨を催告することができない。
  • CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bがその期間内に確答をしないときは、Bは、追認を拒絶したものとみなされる。
  • CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bが追認を拒絶したときは、Aは、Cに対して、Cの選択に従い、本件売買契約の履行又は損害賠償の責任を負う。

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この過去問の解説 (2件)

01

無権代理に関する問題です。

選択肢1. Aの行為は無権代理行為であるが、Bが追認をすれば、本件売買契約は有効となる。

適切

 

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じません(民法113条1項)。

したがって、代理権を有しないAの行為を、本人であるBが追認をすれば、本件売買契約は本人であるBに対して効力を生じます。

選択肢2. 本件売買契約が締結されたときに、CがAに代理権がないことを知っていた場合は、Cは、Bに対して、追認をするかどうかを確答すべき旨を催告することができない。

不適切

 

無権代理行為の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます(民法114条)。

したがって、相手方であるCは、Aに代理権がないことを知っていたかどうかに関わらず、本人であるBに対して追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。

選択肢3. CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bがその期間内に確答をしないときは、Bは、追認を拒絶したものとみなされる。

適切

 

無権代理行為の相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。

この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶しなものとみなします(民法114条)。

したがって、本人であるBがその期間内に確答をしないときは、Bは追認を拒絶したものとみなされます。

選択肢4. CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bが追認を拒絶したときは、Aは、Cに対して、Cの選択に従い、本件売買契約の履行又は損害賠償の責任を負う。

適切

 

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負います(民法117条)。

したがって、本人であるBが追認を拒絶したときは、Aは相手方であるCに対して、Cの選択に従い、本件売買契約の履行又は損害賠償の責任を負います。

まとめ

無権代理に関する条文の理解を問う問題です。本問題を通して条文の正確な理解に繋げましょう。

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02

本問は無権代理の追認と催告の効果についての基本的な知識を問う問題です。
代理は、民法総則における最も重要かつ基本的な問題です。
代理を制するものは民法総則を制すると言っても過言ではありません(時効なども重要ですが)。
そして、無権代理は日常的になじみがないせいか、なんとなくとっつきにくい印象があります。しかし、民法の一つの山と言ってもいいところなのできちんと学習しておきましょう。


無権代理行為はよく「無効」と言われますが、理論的には、単なる「無効」ではなく、本人に効果が帰属しない=「効果不帰属」です。
条文上も明確に「本人に対してその効力を生じない(民法第113条第1項)」となっており、一般論として「無効」だとは一言も言っていません。

このため、単純な無効とは違い、
無権代理人の行為自体は無効ではない(民法第117条第1項により無権代理人に一定の責任が生じることがある)。
追認があると、民法第119条ただし書(追認によっても無効な行為は有効とならず、追認の時に新たな行為をしたものみなすことがあるだけ)の規定が適用されず、民法第116条本文により無権代理行為による契約の成立時にさかのぼって有効となる。
となっています。

 

民法第116条本文「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。」

 

民法第119条ただし書「ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。」

 

純粋な無効の場合は新たな行為をしたとみなす(*)のですから、新たな行為として追認の時から効力を生じます。

 

(*)みなす
「みなす」は法律用語です。適当に使ってはいけません。
意味は、「本来は違う(又は違うかどうか判らない)が法律上は同じものとして扱い、かつ、反証により否定することを認めない」です。法律上の擬制と言います。
本条の場合、「追認」は「新たな行為」ではありません。ここで言う「新たな行為」とは、元の無効な法律行為と同質な法律行為のことです。しかし、新たな行為とみなすことで、法律上は新たな行為があったことになります。そして、反証をもってしても新たな行為ではないという主張を認めないということになります(註:「そもそも『追認』ではない」「当事者がその行為の無効であることを知らなかった」という反論は可能です。それを立証すれば、「みなす」ための前提となる要件を満たさないので「みなされない」という結果になります。否定できないのはあくまでも「みなす」という効果そのものであって、前提となる要件を否定することは可能です)。

反証を認めないというのは、つまり、問答無用ということです。これは強力な効果です。「法律上の」擬制はこの強力な効果ゆえに条文上の根拠が必要です。規定のない事実上の擬制というものはありません。
条文上の根拠がないのに「みなす」と言うのは間違いです。世間では間違って使っている人が大勢いますが。
いやしくも法律を学んだなら、間違って使うのは避けましょう。「みなす」は民法の最初の方で学ぶ法律用語なので、正しく使っていないだけで、知っている人には法律素人と一発でバレます。

これに対して反証により覆すことができる場合を「推定(する)」と言います。この場合、規定があれば法律上の推定であり、なければ事実上の推定ということになります。

選択肢1. Aの行為は無権代理行為であるが、Bが追認をすれば、本件売買契約は有効となる。

「最も不適切」ではありません。

 

無権代理行為については、本人の追認があると無権代理行為による契約の成立時にさかのぼって有効になります。

 

民法第116条本文「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。」

 

厳密な言い方をすれば「有効になる」ではなくて、「本人に対しても有効となる」(理論上又は講学上は、「本人に効果が帰属する」と言います)です。

冒頭の解説でも述べていますが、有効となるのは追認の時からではなく無権代理行為による契約の成立時からということには注意しておきましょう。

通常の無効行為であれば追認以前は無効としても、無効である限り法律的には何も起こらないので問題がありません。

しかし無権代理の場合、本人に効果が帰属しないだけであって無権代理行為自体は完全に無効ではありません。
すると、無権代理行為の時から追認までの間の「効果が不帰属」という状態をそのまま残してしまうと法律関係が複雑になるおそれがあります。
そこで、遡って有効にしてしまって無権代理行為の時から完全に有効だったものとして扱うことで法的安定性を損なわないようにしています

この手の「いつから有効か」という話は、「中途半端に有効な法律関係が残らないようにする」という視点で制度ができています。
ですから他にも例えば制限行為能力者の「取り消すことができる」行為について法定代理人等の追認により完全に有効になる場合は、「最初から」有効になります。追認時点までの「一応有効だが取り消しうる」状態を残さないようにするのです。
完全な無効だけは残っても問題がない(法律的には何もないのと同じ)ので、遡及効を認める必要はありません。

選択肢2. 本件売買契約が締結されたときに、CがAに代理権がないことを知っていた場合は、Cは、Bに対して、追認をするかどうかを確答すべき旨を催告することができない。

「最も不適切」です。よってこの肢が正解です。

 

相手方Cが無権代理人Aが無権代理人であることを知っていたとしても、追認の催告はできます。

 

民法第114条前段「前条の場合(無権代理となる場合。筆者註)において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。」


無権代理行為の相手方Cの執り得る手段肢は、3つあります。
催告(第114条)、②取消し(第115条)、③無権代理人Aの責任(第117条)追及です。
このうち、②③は相手方Cが無権代理であることを知っていた場合には、執ることができません

相手方Cは代理がないと知っていたのだから③無権代理人Aの責任を問えないのはもっともだと納得できると思います。最初から、本人に効力を生じない可能性があることを認識していたのですから、そのリスクは自分で負担しろということです。

 

民法第117条「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
「第2号以下略)」

 

また、②取消権もありません。つまり、無権代理人Aに代理権がないと知っていて敢えて契約したのだから相手方Cには取消権を与える必要がないというのも納得できると思います。知っていたことのリスクは知っていた人が負担しろということです。

 

民法第115条「代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。」

 

しかし、①催告は、それによって直ちに何か法律効果が発生するものではありません。本人Bは催告を拒絶することはもちろん、そもそも応答義務がないので無視したって構いません。相手方Cが催告をしても本人Bに何らの法的義務も負担もないのですから、そのくらいは認めても何ら実害がありません。
むしろ、催告すらできなければ無権代理行為がそのまま宙ぶらりんになってかえって中途半端な法律関係がいつまでも存続することにすらなりかねません
つまり、本人Bに何らの負担を課すものではなく、かつ法律関係を早期に確定させるために必要であるということから、相手方Cが無権代理人Aに代理権がないことを知っていたとしても催告までは可能です。

選択肢3. CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bがその期間内に確答をしないときは、Bは、追認を拒絶したものとみなされる。

「最も不適切」ではありません。

 

まさにその通りです。
本人Bにとっては、無権代理人Aと相手方Cの間の契約など、当人たちが勝手にやったことなので知ったことではありません。
知ったことではないので催告を受けても応答する義務はありません。無視していいのです。
そして無視した本人Bの利益を害さずに相手方Cの催告に意味を与えるとすれば、本人Bに被害のないように追認拒絶とみなす、つまり本人Bにとっては何もなかったことにするのが妥当です。
効果が本人に帰属するのか否かが宙ぶらりんの状態を解消するために催告が認められているのですから、応答がなければ本人に不利益を与えないように効果不帰属に確定させることになるわけです。

 

民法第114条「前条の場合(無権代理となる場合。筆者註)において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。」

 

「みなす」なので反証は認められません。

選択肢4. CがBに対し、相当の期間を定めて、その期間内にAの無権代理行為を追認するかどうかを確答すべき旨を催告した場合において、Bが追認を拒絶したときは、Aは、Cに対して、Cの選択に従い、本件売買契約の履行又は損害賠償の責任を負う。

「最も不適切」ではありません。

 

本人Bが相手方Cの催告に対して追認を拒絶すれば、本件無権代理行為が本人Bに対して効力を生じない(効果が帰属しない)ことが確定します。

そうなると、もはや相手方Cは本人Bに対しては何も請求することができません。後は、無権代理人Aとの間でケリをつけることになります。
そこで、相手方Cは無権代理人Aに対して無権代理人の責任(民法第117条)として、履行又は損害賠償を追及することになります。

 

民法第117条第1項「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」


なお、厳密に言えば、無権代理人Aの責任を追及することは常にできるわけではありません。

相手方Cが無権代理であることをであることを知っていた場合
無権代理人Aが無権代理であることを知らず、かつ相手方Cが過失により無権代理であることを知らなかった場合
無権代理人Aが制限行為能力者である場合
の3つの場合には、無権代理人は117条責任を負いません。

 

民法第117条第2項「前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。」

 

③については、設問のただし書に書いてありますが、無権代理人Aと相手方Cの主観要件については何も書いていないのでもしかしたら無権代理人Aは責任を負わないかもしれません。
厳密さには欠けますが、もっと不適切なものがあるので「最も」というわけではありません。

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