管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問31

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

総住戸数60の甲マンションで、管理組合を管理組合法人にするための集会に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法によれば、適切なものはいくつあるか。
ただし、規約で1住戸1議決権の定めがあり、その他別段の定めはないものとする。
なお、甲マンションには、単独名義で2住戸を所有する区分所有者が5人いるものとする。

ア  集会開催日を令和5年12月3日とする場合に、集会招集通知は同年11月25日までに各区分所有者に発しなければならない。
イ  集会開催のための招集通知書は、55部で足りる。
ウ  管理組合を管理組合法人にするためには、区分所有者数42以上及び議決権数45以上の多数による集会の決議が必要である。
エ  集会の目的たる事項が「管理組合を管理組合法人にする件」のため、議案の要領をも通知しなければならない。
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この過去問の解説 (2件)

01

適切なものは「ア・イ・ウ」の三つです。

 

ア 適切

集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならなりません(区分所有法35条1項)。

本肢の場合、11月25日の翌日を1日目として数え、会日の前日である12月2日が7日目にあたるため、適切である。

 

イ 適切

甲マンションは、単独名義で2住戸を所有する区分所有者が5人いるため、55部の招集通知書を送付すれば足ります。

 

 適切

管理組合を管理組合法人にするためには、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要です(区分所有法47条1項)。

甲マンションの区分所有者数は55、議決権総数は60であり、以下のように求められます。

区分所有者数:55✕3/4=41.25 ※42以上

議決権数:60✕3/4=45 ※45以上

 

エ 不適切

通知をする場合において、会議の目的たる事項が以下の決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければなりません。

①共用部分の重大変更

②規約の設定、変更又は廃止

③建物の一部が滅失したときに滅失した共用部分を復旧する旨

④建替え

⑤一団地内の規約を定める

⑥一括建替え承認決議

(区分所有法35条5項)

 

「管理組合を管理組合法人にする件」の場合は上記のいずれでもないため、議案の要領を通知する必要はありません。

 

まとめ

日付や必要な区分所有、議決権数の求め方を本問題を通して確認しましょう。

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02

本問は、管理組合法人化を議案とする集会の招集に関して区分所有法の知識を問う問題です。
個数問題なのですべての肢の正誤を判断しないとならないので易しい問題ではありませんが、基本的な知識なのできちんと憶えておくべきです。

 


アは適切です。

 

区分所有法では集会の招集通知は、会日より少なくとも1週間前に発しなければなりません(標準管理規約では2週間となっているので要注意)。

 

区分所有法第35条第1項本文「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。」

 

この期間を遡る場合の計算は民法に明文の規定がなく、通常の将来に向かっての民法の期間計算の原則を準用します。
民法の原則では、日、週、月又は年をもって期間を計算する場合、初日を算入しません(初日が0時から始まる場合は例外として算入します)。つまり、翌日が起算日となります(会日の24時から集会が始まるということはないでしょう)。
すると、期間計算が逆算となる場合(つまり、「前」という期間)であっても同様で、当日を算入せずに前日を起算日と考えればいいわけです。

 

民法第140条「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。」

 

そこで本肢を見ると、12月3日を会日とするのですからその前日の2日を起算日として1週間つまり7日前は11月25日となります。

 


ところでこの肢の「までに」という表現には注意が必要です。
11月25日「までに」とは「11月25日になるまでに(=始まるまでに)」という意味なのか「11月25日が終わるまでに」なのかはっきりしないのです。

日常的な言葉遣いとしては後者のようにも思えますが、会社法(旧商法)の判例(大審院判例昭和6年5月2日)及び実務では、前者の解釈を採っています。


例えば会社法の株主総会招集通知は総会の日の2週間前「までに」発する必要があるのですが、この場合、例えば12月3日開催としてその2週間前は初日不算入で11月18日「までに」となります。そこで判例実務では「18日になるまで」すなわち遅くとも17日中に株主総会招集通知を発します(なお、判例は株主総会通知の話ではありません)。
つまり、2週間という期間が初日と当日の間に丸々入っている、言い換えれば、初日と当日を除いて2週間の期間が必要と解されています。

期間計算の規定に厳密に従って考えると、期間は、初日を不算入とした上でその末日が終了した時点、つまり最終日の24時に満了します。

 

民法第141条「前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。」

 

普通に期間計算した場合に11月18日から2週間後はいつかと言えば、11月19日が起算日で2週間後の応当日である12月3日が末日になるのですが、期間が満了するのは末日12月3日の24時です。
ところが総会の日が12月3日だとすると、その時点ではまだ24時になっていませんから期間は満了していないことになります。
ですから、発する日を1日前にずらさなければならないのです。

区分所有法についてはおそらく判例はないと思いますが、同じ期間計算の問題である以上、別異に解する理由はないでしょう。すると、11月25日「までに」とは11月25日に「なるまでに」すなわち遅くとも11月24日中に発しなければならないという意味だと考えるべきです。

 


イは適切です。

 

集会の招集通知は、「各」区分所有者に発しなければならず、かつ、それで足ります。
全戸数60戸で、一人で2戸を所有する所有者が5人いるのですから、この5人が10戸を所有し、残り50戸がこの5人とは別の50人(共有であれば50人以上になりますが、結論は変わりません)の所有なのですから、区分所有者は55人います。よって、55部の通知を出せば足ります。
共有の場合は、そのうちの議決権行使者として定められた者、その者がない時は共有者の一人に通知すればいいので、結局通知を出す数は増えません。

 

区分所有法第35条「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第40条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
(第3項以下略)


なお、2住戸所有者が「単独名義」とわざわざ書いてあるのは、これが共有だと話が変わる可能性があるからです。
例えば、AB二人が2戸の住戸abを共有し、Aはa、Bはbについて議決権行使者と定められていた場合には、ABそれぞれに通知が必要になり、部数が増えます。

 


ウは適切です。

 

管理組合の法人化に必要な集会の議決数は、区分所有者及び議決権の各3/4以上です。
そうすると、区分所有者数が55名で議決権総数が60個なのですから、それぞれの3/4以上とは、42名以上(*)、45個以上となります。

(*)55×3÷4は41.25です。41.25という半端な人数はあり得ません。そして41名は41.25よりも小さいですから3/4以上にならず、結局切り上げて42名以上必要ということになります。

 

区分所有法第47条第1項「第3条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。」

 


エは適切ではありません。

 

管理組合の法人化を議案とする集会の招集を通知する場合、併せて議案の要領を通知する必要はありません。
 

集会において特別多数の議決が必要な重要な議案では議案の要領が必要な場合がありますが、それは題目だけ見ても具体的な内容が判らないものについて具体的な内容を説明するために要領を通知します。

 

区分所有法第35条第5項「第1項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第17条第1項、第31条第1項、第61条第5項、第62条第1項、第68条第1項又は第69条第7項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。」

 

本条に定める要領を必要とする議決事項は、

第17条第1項「(軽微なものを除く)共用部分の変更」
第31条第1項「規約の設定、変更又は廃止」
第61条第5項「建物の価格の1/2を超える部分が滅失した(大規模滅失)の場合の滅失した共用部分の復旧」
第62条第1項「建替え決議」
第68条第1項「団地規約の設定」
第69条第7項「一括建替え承認決議」

です。

どれも、単に議案として表題だけ示されても具体的内容が判らないものばかりです。だからこそ、具体的な内容を説明するために要領を付けなさいと言っているのです。

 

これに対して、「管理組合の法人化」はそれだけで内容が判ります。わざわざ要領として何か説明を付けないと具体的な内容が判らないようなものではありません。
ですから、議案の要領は付ける必要はありません。付けるだけ無駄とも言えます。

 


以上、適切なものはアイウの3つです。

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