管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問28

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問題

管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問28 (訂正依頼・報告はこちら)

専有部分の占有者等に関する次の記述のうち、標準管理規約(単棟型)によれば、最も適切なものはどれか。
  • 総会の議題が専有部分でのペットの飼育を禁止にする件であったため、同居しているペットの飼い主である甥を代理人として議決権を行使させた。
  • 管理費等相当額を家賃に含めて支払っている賃借人は、管理費等の値上げが総会の議題となっている場合でも、利害関係人として管理組合の会計帳簿の閲覧請求をすることができない。
  • 水漏れ事故により、他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあることから、理事長が調査をするために専有部分への立入りを請求しても、賃借人は、賃貸人である区分所有者の承諾がない限り当該専有部分への立入りを拒むことができる。
  • 区分所有者は、専有部分を第三者に賃貸する場合には、規約及び使用細則に定める事項を賃借人に遵守させる旨を誓約する書面を管理組合に提出しなければならない。

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この過去問の解説 (2件)

01

標準管理規約に関する問題です。

選択肢1. 総会の議題が専有部分でのペットの飼育を禁止にする件であったため、同居しているペットの飼い主である甥を代理人として議決権を行使させた。

適切

 

組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その組合員の住戸に同居する親族は代理権を行使することができます(標準管理規約第46条5項2号)。

したがって、同居している甥は、親族であり、代理人として議決権を行使することができます。

選択肢2. 管理費等相当額を家賃に含めて支払っている賃借人は、管理費等の値上げが総会の議題となっている場合でも、利害関係人として管理組合の会計帳簿の閲覧請求をすることができない。

不適切

 

利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、会計帳簿を閲覧させなければなりません(標準管理規約第64条1項)。

この利害関係人とは、賃借人が含まれます(標準管理規約コメント第64条関係①)。

選択肢3. 水漏れ事故により、他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあることから、理事長が調査をするために専有部分への立入りを請求しても、賃借人は、賃貸人である区分所有者の承諾がない限り当該専有部分への立入りを拒むことができる。

不適切

 

管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができます(標準管理規約第23条1項)。

 これにより立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはなりません(同条2項)。

したがって、賃借人は正当な理由がなければ立入りを拒むことができません。

選択肢4. 区分所有者は、専有部分を第三者に賃貸する場合には、規約及び使用細則に定める事項を賃借人に遵守させる旨を誓約する書面を管理組合に提出しなければならない。

不適切

 

区分所有者は、専有部分を第三者に賃貸する場合には、規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させる旨の誓約書を管理組合に提出させなければなりません

したがって、書面を管理組合に提出しなければならないのは区分所有者ではなく、専有部分を賃借した第三者です。

まとめ

組合員が代理権により総会の議決権を行使しようとする場合において、代理権が認められる者は以下のとおりですので、覚えるようにしましょう。

①その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)

②一親等の親族

③その組合員の住戸に同居する親族

(標準管理規約第46条5項2号)

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02

本問は、専有部分の占有者、つまり、区分所有者以外で住戸に住んでいる人について、標準管理規約(単棟型)に定める権利義務について問うものです。
ちょっと書き方が雑ではないか?と思える部分があって、あまり良い問題だとは思えませんが、正誤自体ははっきり判断できるので難易度は低い問題です。引っ掛けと思える部分はありますが。

選択肢1. 総会の議題が専有部分でのペットの飼育を禁止にする件であったため、同居しているペットの飼い主である甥を代理人として議決権を行使させた。

「最も適切」です。よってこの肢が正解です。

 

同居している甥は「組合員の住戸に同居する親族」であり、組合員の代理人として議決権を行使することができます。

代理人による議決権の行使については、標準管理規約(単棟型)の規定では、代理人資格を①(事実婚を含む)配偶又は一親等の親族(いずれも同居の必要なし)その組合員の住戸に同居する親族他の組合員のいずれかに限定しています。

 

標準管理規約(単棟型)第46条第5項「組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
二 その組合員の住戸に同居する親族
三 他の組合員」

 

親族とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族のことです。甥ならば3親等になりますから、親族に当たります。よって同居していれば代理人になれます。

 

民法第725条「次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族」

民法第726条「親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2 傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。」

 


なお、この代理人資格の制限はあくまでも任意代理人の話であって、法定代理人は、規約の規定に関わらず、当然に代理人です。

また、区分所有法では代理人資格に制限はありません
ついでに憶えておきましょう。

 

区分所有法第39条第2項「議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。」

 

代理人資格についての規定は特にありません。


ちなみにペットの飼育云々という設定は引っ掛け狙いだと思います。総会議案がペットの飼育だろうが何だろうが、代理人として議決権を行使できるかどうかには何の関係もありません。
総会の目的について利害関係を有する者が総会に出席して意見陳述できる規定(標準管理規約(単棟型)第45条第2項)との絡みで、ペットを飼育する同居人が利害関係を有するかどうかという「余計なこと」を考えさせて攪乱することを狙ったのかもしれません。

選択肢2. 管理費等相当額を家賃に含めて支払っている賃借人は、管理費等の値上げが総会の議題となっている場合でも、利害関係人として管理組合の会計帳簿の閲覧請求をすることができない。

「最も適切」ではありません。

 

利害関係人には会計帳簿の閲覧請求権があります。そして一般論として賃借人は利害関係人になります。

 

標準管理規約第64条第1項「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳その他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。(後段略)」

 

標準管理規約コメント第64条関係
「①第1項から第3項までにおける「利害関係人」については、コメント第49条関係①を参照のこと。」

 

同コメント第49条関係
「①第3項の「利害関係人」とは、敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上利益や不利益を受けたりする者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならない。」

選択肢3. 水漏れ事故により、他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあることから、理事長が調査をするために専有部分への立入りを請求しても、賃借人は、賃貸人である区分所有者の承諾がない限り当該専有部分への立入りを拒むことができる。

「最も適切」ではありません。

 

標準管理規約(単棟型)には、管理に必要な範囲で専有部分に立入りを請求でき、請求を受けた者は正当な理由がなければ立入りを拒否できません
「立入りを請求された者」は区分所有者に限定されませんから、専有部分の占有者であっても構いません。

 

標準管理規約(単棟型)第23条「前2条により管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
2 前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
(第3項及び第4項略)

 

ここで、「賃貸人である区分所有者の承諾がないこと」は拒否する正当な理由になりません。


なお本肢では、「他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある」とは書いてありますが、「緊急に立ち入らないと」とは書いてないので微妙なのですが、

 

同条第4項「前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。」

 

に該当する可能性はあります。

 

同コメント第23条関係(第4項関係)
「①第4項の緊急の立入りが認められるのは、災害時等における共用部分に係る緊急的な工事に伴い必要な場合や、専有部分における大規模な水漏れ等、そのまま放置すれば、他の専有部分や共用部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある場合に限られるものである。」

 

とありますが、単なる水漏れで「他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある」ということもないでしょうから、「大規模な水漏れ」であり、「他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある」ので第4項に該当するというのが出題者の想定なのでしょう。

 

ただしこの場合、「前3項の規定にかかわらず」とある通り、そもそも立入りを請求する必要自体がありません。請求自体が不要なのですから請求拒否もへったくれもないのですね。実際には住人が不在でもなければ請求しますが。
ですから、仮に出題意図が本項の適用を想定しているならば、拒否は問題にならないのですからできなくて当然です。

厳密さを欠いていてあまり良い記述ではありません。

選択肢4. 区分所有者は、専有部分を第三者に賃貸する場合には、規約及び使用細則に定める事項を賃借人に遵守させる旨を誓約する書面を管理組合に提出しなければならない。

「最も適切」ではありません。

 

管理組合に規約等を遵守する旨の誓約書を提出するのは、賃貸人である区分所有者ではなく、賃"借"人です。
賃貸人である区分所有者は賃借人に誓約書を提出「させる」義務があるだけです。

 

標準管理規約(単棟型)第19条「区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、この規約及び使用細則に定める事項をその第三者に遵守させなければならない
2 前項の場合において、区分所有者は、その貸与に係る契約にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の条項を定めるとともに、契約の相手方にこの規約及び使用細則に定める事項を遵守する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない
(第3項略)

 

第1項で賃貸人の賃借人に規約等を「遵守させる」義務を規定し、第2項で遵守する旨の誓約書を賃借人に「提出させる」義務を規定しています。いずれも賃人の義務です。

 

現実問題として、賃借人が規約等に違反した場合、賃借人自身が誓約書を出していれば誓約に反するとして直接的な対応ができますが、賃貸人が遵守させると言っているだけでは、賃借人は管理組合に対して何も言っていないので直接的に対応する明確な根拠がなく、ともすればいちいち賃貸人経由で対応せざるを得ないという迂遠な話になりかねません。
直接的な関係がある方が問題が起きた時に対処しやすいのです。

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