管理業務主任者 過去問
令和5年度(2023年)
問1
問題文
マンションにおける不法行為責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、適切なものはいくつあるか。
ア マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えたときは、当該管理員個人に不法行為が成立しなくても、使用者責任を負う場合がある。
イ マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えた場合、使用者責任に基づいて当該第三者に対してその賠償をしたときでも、当該管理員に対して求償権を行使することは認められない。
ウ マンションの専有部分にある浴室から水漏れが発生し、階下の区分所有者に損害が生じた場合、当該専有部分に居住する区分所有者は、その損害を賠償する責任を負うが、水漏れの原因が施工会社の責任によるときは、当該施工会社に対して求償権を行使することができる。
エ マンションの共用部分の修繕工事を請け負った施工会社が、その工事について第三者に損害を加えた場合に、注文者である当該マンションの管理組合は、注文又は指図について過失がない限り、損害を賠償する責任を負わない。
ア マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えたときは、当該管理員個人に不法行為が成立しなくても、使用者責任を負う場合がある。
イ マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えた場合、使用者責任に基づいて当該第三者に対してその賠償をしたときでも、当該管理員に対して求償権を行使することは認められない。
ウ マンションの専有部分にある浴室から水漏れが発生し、階下の区分所有者に損害が生じた場合、当該専有部分に居住する区分所有者は、その損害を賠償する責任を負うが、水漏れの原因が施工会社の責任によるときは、当該施工会社に対して求償権を行使することができる。
エ マンションの共用部分の修繕工事を請け負った施工会社が、その工事について第三者に損害を加えた場合に、注文者である当該マンションの管理組合は、注文又は指図について過失がない限り、損害を賠償する責任を負わない。
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問題
管理業務主任者試験 令和5年度(2023年) 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
マンションにおける不法行為責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、適切なものはいくつあるか。
ア マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えたときは、当該管理員個人に不法行為が成立しなくても、使用者責任を負う場合がある。
イ マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えた場合、使用者責任に基づいて当該第三者に対してその賠償をしたときでも、当該管理員に対して求償権を行使することは認められない。
ウ マンションの専有部分にある浴室から水漏れが発生し、階下の区分所有者に損害が生じた場合、当該専有部分に居住する区分所有者は、その損害を賠償する責任を負うが、水漏れの原因が施工会社の責任によるときは、当該施工会社に対して求償権を行使することができる。
エ マンションの共用部分の修繕工事を請け負った施工会社が、その工事について第三者に損害を加えた場合に、注文者である当該マンションの管理組合は、注文又は指図について過失がない限り、損害を賠償する責任を負わない。
ア マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えたときは、当該管理員個人に不法行為が成立しなくても、使用者責任を負う場合がある。
イ マンション管理業者は、自らが雇用する管理員が、その業務の執行について第三者に損害を加えた場合、使用者責任に基づいて当該第三者に対してその賠償をしたときでも、当該管理員に対して求償権を行使することは認められない。
ウ マンションの専有部分にある浴室から水漏れが発生し、階下の区分所有者に損害が生じた場合、当該専有部分に居住する区分所有者は、その損害を賠償する責任を負うが、水漏れの原因が施工会社の責任によるときは、当該施工会社に対して求償権を行使することができる。
エ マンションの共用部分の修繕工事を請け負った施工会社が、その工事について第三者に損害を加えた場合に、注文者である当該マンションの管理組合は、注文又は指図について過失がない限り、損害を賠償する責任を負わない。
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この過去問の解説 (2件)
01
適切なものは「ウ・エ」の二つです。
ア 不適切
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条)。
この責任は、被用者が不法行為の要件を満たすことが必要であると解されています。
したがって、被用者である当該管理員個人に不法行為が成立していなければ、使用者責任を負う場合はありません。
イ 不適切
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負います(民法715条)。
この規定は、使用者から被用者に対する求償権の行使を妨げないとされています(同条3項)。
したがって、使用者責任に基づいて当該第三者に対してその賠償をしたときは、当該管理員に対して求償権を行使することが可能です。
ウ 適切
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負います(民法717条)。
この場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、その者に対して求償権を行使することができます(同条3項)
したがって、水漏れの原因が施工会社の責任であるときは、当該施工会社に対して求償権を行使することができます。
エ 適切
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負いません。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りではありません(民法716条)。
したがって、マンション管理組合が注文又は指図に過失がない場合は、損害を賠償する責任を負いません。
使用者責任(民法715条)、注文者の責任(民法716条)、土地の工作物責任(民法717条)の理解が問われています。
条文の正確な理解を心がけましょう。
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02
本問は、民法の不法行為に関する基本的な条文知識を問うものです。
不法行為は理論上、一般不法行為と特殊の不法行為に分類されますが、本問は、特殊の不法行為に関する問題です。
一般不法行為というのは、標準的な不法行為のことだと思えばいいです。
そして特殊の不法行為とは、一般不法行為の特則として、要件又は効果に何か変更を加えるものだと思えばいいです。
復習もかねて不法行為について簡単に解説をしておきます。
まず、一般不法行為とは、
①故意又は過失によって
②他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し
③これによって(=その結果として)
④他人に損害を与えた
ことを積極的な要件として成立し、その効果は損害賠償責任になります。
以下は、教養レベルの話で試験対策としては知らなくて全然問題ありません。
①の「故意又は過失」は、不法行為者の内心ないし認識の問題であるので、理論的には「主観的要件」と言います。法律論における主観的と言う言葉は多義的ですが、概ね、属人的、個人的、つまり「その人固有の」という意味合いか又は一般人の話であってもその内心、意識など「心理的な」話という意味合いだと思っておけば大体合っています。簡潔に人の内心に関する話と言い換えても良いです。
一方、②~④の要件は、不法行為者の内心等の問題ではないので客観的要件と言います。簡単に言えば、外部から認識できるという意味合いです。物又は現象に関する話と思って構いません。
③は②と④の間の因果関係、④は結果と言います。
なお、消極的要件として、行為者に⑤違法性阻却事由がないこと(民法第720条)、⑥責任阻却事由がないこと(民法第712条及び第713条)があります。まとめて正当化事由がないとも言います。
消極的というのは、ないのが原則という意味で、訴訟においては証明責任の分配に影響します。
"ない"のが前提なので、不法行為の成立を否定する不法行為者側が正当化事由が"ある"ことを主張し、かつ立証しなければならないということになります。
積極的要件は、原則として被害者が主張立証します(特則による証明責任の転換はあります)。
話を戻します。
I.特殊の不法行為は各種ありますが、特に不動産系の試験で重要なのは、土地工作物責任(以下、工作物責任と言います)です。マンション関係ですと、土地、建物の共用部分、附属建物など管理組合が管理する物が原因となった不法行為については、当該物を管理する管理組合が工作物責任を負担するという形で問題になります。
厳密に言うと土地については、造成等により人工的に手を加えてあれば「工作物」になりますが、自然のままのものは「工作物」にはなりません。しかし、マンションの敷地が、手つかずの自然のままの土地の上に建っているということはちょっと想定しがたいです。実際に問題になるとすれば法面、擁壁などが崩落した場合でしょう。
また、専有部分が原因となった場合には、当該専有部分の占有者が土地工作物責任を負担します。
ちなみに、原因が専有部分か共用部分か不明の場合には、共用部分が原因と推定されます。
数年前に逗子でマンション敷地の法面が崩落して女子高校生が死亡した事故がありましたが、典型的な工作物責任の問題になります。
この規定の特に重要な意義は以下の2つです。
①占有者には責任があるのが原則で例外的に免責になるという規定により、証明責任を転換すること。
一般不法行為では、(故意又は)過失の証明責任は被害者にありますが、この規定により原則と例外を入れ替えて過失のないことの証明責任を占有者に負担させています(理論上又は講学上、「中間責任」と呼びます)。
なお、問題となる過失が、加害行為そのものについての過失ではないという点も違います。
②所有者には占有者が免責される場合に限って補充的に責任を認めるが、その責任は無過失責任である。
民法の大原則の過失責任主義の例外です。占有者に責任がないことが必要ですが、占有者に責任がなければ所有者は過失がなくても責任を負います。
II.また、管理業者などが関与する場合及び管理組合に被用者がいる場合などの使用者責任も重要です。
これも最大の眼目は証明責任の転換です。
III.後は、修繕等で業者に作業を発注することもよくあるので、注文者の責任も問題になります。
この規定は実質は当然の注意規定であり、なくても結論には影響しません。
元々、請負人は注文者から独立して仕事をするのでその仕事について不法行為があったとしても注文者が責任を負わないのが本来なのです。つまり、本文は当たり前のことを言っているにすぎません。
注文又は仕事についての指図に過失があれば責任を負うことを規定しているただし書も第709条に定める一般不法行為と何も変わりません。したがって、仮にただし書がなくても第709条を根拠に賠償責任を負います。
IV.最後に重要度はかなり低いのですが、管理業務主任者試験の過去問で動物占有者の責任が出題されたことがあります。
動物占有者の責任とは大雑把に言えば、動物占有者はその占有する動物が他人に損害を与えたら賠償しなさいという話です。
この規定も、証明責任の転換が最大の目的です。
さて、設問の話に入ります。
アは適切ではありません。
設問中にも書いてある通り使用者責任の問題です。
使用者責任は、被用者の不法行為について使用者にも賠償責任を負わせるものです。理論的な説明は省略しますが、被用者に不法行為が成立することが前提であるというのが判例・通説の採る見解です。
この「被用者が~第三者に加えた損害」とは不法行為による損害のことだということです。
イは適切ではありません。
使用者責任は被用者に不法行為が成立することが前提ですから、被用者自身も不法行為責任を負います。そして内部的な負担割合に応じて求償を行うことができます。
裁判例には、全額について求償を認めたものもあります。
なお、逆求償、すなわち被用者が全額賠償した場合に使用者に対して負担割合分の求償が可能かどうかについては、明文の規定はありませんが、求償と同様に認められると理解しておいて構いません。
ウは適切です。
専有部分の不具合が原因で他人に損害を与えたのであれば、当該専有部分の占有者は工作物責任を負います。
しかし、それは他の人に不法行為が成立するかどうかとは別問題です。
その不具合の原因が施工不良によるものであるならば、民法第709条の要件を満たす限り、施工業者にも独立して不法行為が成立します。この場合、使用者責任と同様に求償権を行使することができます。
エは適切です。
条文そのままです。
請負契約では、注文者には原則として責任は生じません。しかし、注文者が請負人に対してした注文又は指図に過失があって「それが損害の原因になっているならば」責任を負います。
そもそも請負は仕事の完成が目的であり、どうやって完成させるかは、請負人の裁量に任せられています。そこが雇用との本質的な違いです。ですから、原則として、発注者は請負人がどのように仕事を完成させるかについて関与しません。結果がすべてだということです。
関与しないところで起きた問題について責任を問われる筋合いはありません。
しかし、請負人に対する注文又は指図自体に問題があったならば、そのような問題のある注文又は指図自体が不法行為となることはあり得ます。
これは第709条の一般不法行為の要件を満たすかどうかという話なので、注文又は指図に過失があり「そのせいで」損害を与えたならば、注文者自身にも独立した不法行為が成立して賠償責任を負うことがあります(たとえ注文又は指図に過失があったとしても、損害がそれと無関係に生じたものであれば過失と損害の間の因果関係を欠くので責任は負いません)。
理論的には請負人の不法行為とは別の独立した不法行為なので第716条ただし書が仮になかったとしても第709条を根拠に不法行為が成立します。その意味で第716条ただし書は「当然のことを念のために規定した注意規定」です。
なお、本肢は「工事について」となっています。これが例えば「工事により完成した擁壁に欠陥があったために」だったりすると、これは工作物責任の問題になります。
請負人自身はもちろん欠陥工事の責任を負いますが、管理組合も工作物責任による責任を負います。
以上により適切なものはウとエの2つです。
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